No.255 労働安全衛生マネジメントシステム    その1:変遷

ITコラム
2018年6月26日

 

ISO 飛鳥 石橋一史によるITコラム
~帝国ニュースに掲載されたものを紹介していきます~

 

『労働安全衛生』に関するISOマネジメントシステムは、ISO45001:2018として本年制定された。この労働安全衛生は、組織の業務には欠かすことのできないマネジメントシステムの重要な要素であるにも拘わらず、なぜISO(国際標準化機構)の制定が遅れたのか、これには理由がある。

遡ること24年前、1994年にISOの『環境マネジメントシステム委員会』から、労働安全衛生に関するマネジメントシステムの提案が挙がり、議論された。しかし、このテーマはILO(国際労働機関)の範疇であるという意見が主流で、却下されてしまった。

その後、各国が労働安全衛生マネジメントシステムについて独自の国家規格を制定し始めたことから、ISOが目指す国際標準化が進まなくなるとして、英国をはじめとした国々の機関が一緒になり、1999年に労働安全衛生マネジメントシステムの認証規格としてOHSAS(OHSAS:18001)を制定。これは、のちにISO規格が制定された場合、廃止されると云う暫定処置であった。

やがて、2000年にBSI(英国規格協会)からISO化を正式に提案されたが、賛成29、反対20、棄権3と、過半数は超えたものの総数の2/3を超えておらず、またも否決。OHSASは引き続き、労働安全衛生マネジメントシステムの認証規格として使われていた。しかし、ISOの規格ではないことから、審査機関ごとの、いわゆるプライベート認証という位置づけが続くことになった。

来週は、ISO45001の誕生…

 

格言:手を使って仕事をする人は労働者、手と頭を使って仕事をする人は職人、自分の頭と他人の手を使って仕事をする人はエグゼクティブ、口先だけで仕事する人は、政治家・詐欺師の類。